「歳月を重ねて思う父の苦労」 (「アスナロ」の過去情報へ戻る)
2004年9月30日(木)
長崎市内に住むIさん(九十歳)に十年ぶりにお会いしました。
しごく元気で新聞の読者の声に投稿して、ときどき採用されるということでした。
特にお願いして、そのいくつかを見せていただきました。
九十年(大正三年生れ)という苦節の歳月を重ねたIさんの目には、
過去と現在そして未来をするどく捉えた警鐘が多く、
私には考えが及ばない賢察にみちた文章でした。
佐賀へ帰った数日後、Iさんから会えてとても嬉しかったと丁重な封書が届きました。
そのなかに、当時の自分はN中学校の修学旅行で上海にゆくことになった。
父は明治十年生まれのサラリーマンで月給が四十円。
その父が旅費の四十円と小使い四十円の工面にたいそう苦労して持たせてくれた。
おかげで存分に青春を謳歌して私は帰国した。
九十歳となったいま、四十円は父の一ヶ月の月給であったことを思うとき、
どれほど父が苦労して旅費を準備したことか、胸がしめつけられる。
このお話をし残していたと最後にありました。
敬老の日は過ぎましたが、激動の時代に立ち向かった人たちのご苦労にも敬意を払いたいものです。
2004年9月30日 佐賀新聞 「ひろば」に掲載